ウェブ制作で失敗しないための発注者向けセキュリティ対策とトラブル対応

ウェブ制作で失敗しないための発注者向けセキュリティ対策とトラブル対応

Message box 公開日:2025.08.13 更新日:2025.08.12

ウェブサイトは公開された瞬間から、世界中のアクセスや攻撃の可能性にさらされています。サイト改ざんや情報漏えいが起これば、信用失墜や金銭的損失など深刻な影響は避けられません。

 

ウェブ制作でセキュリティ対策が重要な理由

ウェブサイトは企業や店舗の顔であり、情報発信や集客の中心となる存在です。しかし、公開された瞬間から世界中のアクセスを受けるため、サイト改ざんや情報漏えいといったリスクに常にさらされています。

 

たとえば、ある企業では公式サイトが改ざんされ、トップページに不正な広告や第三者の政治的メッセージが数日間表示されてしまいました。この間、正しい情報を得られなかった顧客から苦情が殺到し、問い合わせ対応に追われたうえ、検索エンジンからも一時的に危険サイトとして警告表示される事態に。結果として、新規顧客獲得の機会を逃し、数百万円規模の損失が発生しました。

 

また、情報漏えいの事例では、ECサイトの会員情報数千件が外部に流出し、氏名や住所、電話番号に加えて一部クレジットカード情報も含まれていました。被害を受けた顧客への個別連絡や補償対応、クレジットカード会社との調整に莫大な時間と費用がかかり、さらにニュース報道やSNSで拡散され、ブランドイメージが大きく傷つきました。この影響で既存顧客の利用停止や取引先からの契約見直しが相次ぎ、売上が大幅に減少しました。

 

こうしたリスクを避けるためには、制作段階からセキュリティを考慮することが重要です。後からの修正や対策は、システム改修や再構築が必要となるケースが多く、結果的にコストや工数が大幅に増加します。

 

また、既に稼働中のサイトを長期間停止せざるを得ない場合もあり、ビジネスへの影響が大きくなります。そのため、企画や設計の段階からセキュリティ要件を明確にし、制作会社と共有しておくことが望まれます。

 

発注者として最低限押さえておきたいセキュリティの基礎知識もあります。まず、通信内容を暗号化する「SSL/TLS」の導入は必須です。URLが「https://」で始まるサイトはこれに対応しており、ユーザーが入力する情報が安全に送信されます。

 

また、CMSやプラグインの脆弱性を悪用されないよう、定期的なアップデートと不要な機能の削除も重要です。さらに、パスワードの強化やアクセス制限、バックアップ体制など、基本的な防御策を把握しておくことで、制作会社との打ち合わせや契約時に適切な要望を伝えやすくなります。

 

ウェブ制作はデザインや機能性だけでなく、セキュリティの確保が長期的な信頼と運用安定性を支える土台となります。

 

発注時に確認すべきセキュリティ要件と契約のポイント

ウェブ制作を依頼する際は、デザインや機能だけでなく、セキュリティ面の要件を契約前に明確化することが重要です。まず、制作会社に確認すべき具体的項目として、通信暗号化のためのSSL設定、CMSやプラグインの定期更新体制、公開前の脆弱性診断の有無があります。これらはサイトの安全性を大きく左右するため、契約書や仕様書に明記しておくと安心です。

 

また、個人情報やクレジットカードなどの決済情報を扱う場合は、データの取り扱いルールと責任分担を明確にしましょう。漏えい事故が発生した際の責任範囲や報告手順を事前に定めることで、トラブル時の混乱を防げます。

 

さらに、セキュリティは納品時で終わりではなく、保守・運用契約による継続的な対策が不可欠です。CMSやプラグインのアップデート、定期的なバックアップ、サーバー監視など、運用フェーズで必要な作業を含めた契約を結ぶことで、長期的な安全性を確保できます。

 

外部委託先のセキュリティ意識を見極めるためには、「過去にどのようなセキュリティ対策を実施してきたか」「脆弱性が見つかった場合の対応フローはどうか」「保守中に知り得たデータの取り扱いルールはどうなっているか」などの質問が有効です。こうした確認を通じて、信頼できる制作パートナーを選ぶことが、安心して運用できるウェブサイトにつながります。

 

納品後も安心して運用するための発注者の役割

ウェブサイトは納品された瞬間が完成ではなく、そこからの安全な運用管理が本当のスタートです。発注者としての役割を果たすことで、長期的に安心してサイトを運営できます。

 

まず重要なのは、定期的なアップデートとバックアップです。CMSやプラグイン、サーバーのソフトウェアは時間の経過とともに脆弱性が発見されるため、最新の状態に保つことが不可欠です。

 

また、万一サイトが改ざんされた場合でも、バックアップがあれば迅速に復旧できます。バックアップは自動化し、複数の保存先(クラウドや外部ストレージ)を用意しておくと安心です。

 

運用チームや社内担当者には、パスワード管理やアクセス権限設定といった基本的な運用ルールの徹底が必要です。パスワードは長く複雑なものを使い、定期的に変更します。アクセス権限は必要最小限に絞り、退職者や外部委託契約終了者のアカウントは速やかに削除します。

 

また、セキュリティインシデント発生時の連絡体制と初動対応も事前に整えておくことが大切です。たとえば、情報漏えいが発覚した場合は、まず関係部署・制作会社・サーバー管理者へ即時連絡します。

 

その後、漏えい範囲や原因を特定し、被害拡大防止策(該当システムの停止、パスワードリセットなど)を実施します。個人情報が含まれる場合は、法令やガイドラインに基づき、関係機関や利用者への報告・謝罪を速やかに行います。初動対応の遅れや不十分な説明は信頼失墜を招くため、平時から手順を明文化しておくことが望まれます。

 

さらに、制作会社や外部業者と長期的な連携を保つメリットも大きいです。サイトの仕様や構造を把握しているパートナーがいれば、アップデートや不具合対応が迅速かつ的確に行えます。また、新しい脅威やセキュリティ技術の情報を共有してもらえるため、発注者だけでは難しい高度な対策も実現できます。

 

このように、納品後は発注者自らが「運用責任者」の意識を持ち、日常的な更新・監視とともに、万一の事態にも備える体制を構築することが、安心してサイトを活用し続けるための鍵となります。

 

まとめ

ウェブ制作では、公開後すぐに世界中からアクセスされるため、サイト改ざんや情報漏えいといった重大なリスクに常に晒されています。被害が発生すれば、信用失墜や金銭的損失、長期的な顧客離れなど深刻な影響が及びます。

 

これを防ぐには、制作段階からSSL設定や脆弱性診断、CMSの更新体制などのセキュリティ要件を明確にし、契約時に責任分担やデータの取り扱いルールを定めることが重要です。

 

納品後も、アップデートやバックアップ、パスワード管理、アクセス権限設定など基本的な運用ルールを徹底し、情報漏えい時には迅速な連絡と被害拡大防止、関係機関への報告を行う体制が必要です。制作会社や外部業者と継続的に連携し、最新の脅威に備えることで、長期的な安全性と信頼を守ることができます。