ウェブサイトは、企業やサービスの第一印象を左右する重要なツールです。しかし、ただ制作会社に依頼するだけでは思い通りの成果は得られません。とくに「誰に向けたサイトか」という視点が曖昧だと、見た目は整っていても反応が取れないサイトになってしまいます。

本記事では、発注者がターゲットを意識しながら制作を依頼し、期待以上の成果を引き出すための具体的な手順とポイントを3つの章で詳しく解説します。

 

ターゲット設定と要件定義

ウェブ制作の成功は、最初の方向性にかかっています。とくに「誰に向けたサイトなのか」を明確にすることが、全体設計や表現方法を左右します。本章では、ターゲットの具体的な設定方法と、それを踏まえた要件定義のポイントについて詳しく解説します。

 

ターゲットを明確にする意義

ウェブサイト制作を依頼する際、まず明確にすべきは「誰に見てほしいサイトか」です。ターゲットが不明確なまま制作を始めると、メッセージやデザインの方向性が曖昧になり、結果として「なんとなく情報が載っているだけ」のサイトができてしまいます。

具体的なターゲットを設定することで、訴求力のあるコンテンツや導線設計が可能になります。たとえば、「30代前半の共働き夫婦で、平日はスマートフォン中心に情報収集している」といったレベルまでターゲット像を深掘りすると、必要なコンテンツやレイアウト、トーンの選定も明確になります。

 

要件定義で伝えるべきポイント

ターゲットが定まったら、次はその情報を「要件定義書」に落とし込む工程です。要件定義には以下のような要素を整理・明記することが推奨されます。

 

サイトの目的（例：問い合わせ獲得、採用強化、認知向上）

 

想定ターゲットの属性（年齢・性別・職業・課題・情報収集の方法など）

 

提供するサービスや商品の強み

 

競合サイトとの違いや参考になるサイト

 

コンテンツ構成や必要なページ、機能要件（フォーム・CMSなど）

 

これらを体系的にまとめておくことで、制作会社との意思疎通がスムーズになり、精度の高い提案を引き出すことが可能になります。

 

ターゲット設定の失敗例と注意点

ありがちな失敗は「ターゲットを絞りきれず、結果として誰にも響かないサイトになる」ことです。たとえば「全年齢・全業種が対象」のような広すぎる設定では、訴求の焦点がぼやけ、何を伝えたいのかがわかりにくくなります。

また、社内の思い込みだけでターゲットを定義すると、実際の顧客像とズレが生じる可能性があります。可能であれば既存顧客へのアンケートやインタビューを実施し、データに基づいたターゲット像を設定しましょう。

 

依頼準備とRFP作成

ターゲットが明確になったら、次はそれを制作会社に「正確に伝える」準備が必要です。その鍵を握るのが、RFP（提案依頼書）です。本章では、RFP作成のポイントと、依頼範囲や予算の整理方法、参考情報の準備について詳しく解説します。

 

RFP（提案依頼書）作成のポイント

RFPとは、制作会社に対して「こんなサイトを作りたい」という情報を伝えるための公式な文書です。発注者の意図や要件を明文化することで、提案の精度が上がり、複数社に依頼する場合でも比較が容易になります。

 

RFPに記載すべき項目は以下の通りです。

 

サイトの目的と背景

 

想定ターゲットの詳細像

 

必要なページとコンテンツ案

 

デザインの方向性（例：シンプル、信頼感、楽しさなど）

 

搭載したい機能（フォーム、ブログ、カート、SNS連携など）

 

想定スケジュール

 

予算の目安

 

RFPは1枚にまとめる必要はなく、A4数枚でも構いません。大切なのは「判断に必要な情報が過不足なく揃っていること」です。

 

依頼範囲と予算の整理

制作会社に依頼する際、「どこまでお願いするのか」を明確にしておく必要があります。たとえば、デザインだけ依頼するのか、コーディングやCMSの構築、さらには公開後の運用サポートまで含むのかによって、必要なリソースも費用も大きく異なります。

また、要件を「必須項目」と「希望項目」に分類し、どの部分が妥協可能かを事前に整理しておくことで、見積もりを受けた際の判断材料になります。予算感についても「上限はいくらまで」「フェーズごとに分けたい」など、柔軟な伝え方が効果的です。

 

参考サイトやイメージの準備

イメージに近い参考サイトをいくつかピックアップしておくと、制作会社にとって大きな参考になります。参考サイトに対して「この構成が良い」「この配色が好み」「この動きは不要」といったコメントを添えて共有することで、よりイメージの共有度が高まります。

 

とくにデザインやUI（ユーザーインターフェース）は言葉だけで伝えにくいため、視覚的な例を準備しておくと齟齬を防ぐことができます。

 

依頼後の進行管理とターゲットの徹底

制作会社に依頼したあとは「お任せ」にしてしまいがちですが、依頼後の関与も成果を大きく左右します。本章では、進行中のチェックポイントやターゲットの視点をどう維持するか、そして納品後の運用体制まで含めた発注者の役割について解説します。

 

進行管理のポイント

ウェブ制作のプロジェクトは、要件定義 → デザイン → 実装 → テスト → 納品という流れで進行します。それぞれのフェーズで確認ポイントを設け、マイルストーンと承認フローを明確にすることで、スムーズな進行が可能になります。

 

たとえば、デザイン案提出のタイミングで「想定ターゲットにマッチしているか」を改めて確認し、文章やレイアウトのトーンも整合性が取れているかチェックします。

 

制作会社との打ち合わせは週1回などのペースで設定し、状況報告と方向性のすり合わせを行うと安心です。

 

ターゲット視点でのチェック

完成に近づくにつれて「見た目」や「機能」に目が行きがちですが、重要なのは「ターゲットにとって分かりやすく、使いやすいかどうか」です。以下のような視点での確認が有効です。

 

スマートフォン表示時の操作性

 

読みたい情報にすぐ辿り着ける動線設計

 

離脱を防ぐ要素（読みやすさ、CTAの配置、読み込み速度）

 

フォームの入力項目は多すぎないか

 

テスト段階では実際のターゲット層に近いユーザーに試してもらい、フィードバックを得ることも成果に直結します。

 

納品後の運用も見据える

サイトは公開して終わりではなく、公開後の運用と改善が重要です。Googleアナリティクスやヒートマップツールを活用してユーザーの動きを可視化し、定期的な分析を行いましょう。

ターゲットが求める情報がしっかり届いているか、新たなニーズが発生していないかをチェックし、柔軟にコンテンツを更新していくことで、継続的な成果につながります。

 

まとめ

ウェブ制作の依頼においては、「誰に向けて、何を伝えたいのか」を明確にすることが最初のステップです。ターゲット像を具体的に設定し、それをもとに要件定義を行うことで、訴求力と機能性を兼ね備えたサイトが実現できます。また、制作会社への依頼では、RFPを活用して伝える情報を整理し、依頼範囲や予算、デザインの方向性も明文化しておくことが重要です。

依頼後もターゲット視点を持ちながら進行管理に関与し、各フェーズでのチェックとフィードバックを重ねることで、完成度の高いサイトが完成します。さらに、サイトは一度作ったら終わりではなく、運用・改善を通じて成果を最大化させていくプロセスが続きます。今回紹介した3つのステップを押さえて、ターゲットにしっかり届くウェブサイトを構築していきましょう。