フリーランスと個人事業主の違いとは?働き方・手続き・税金をわかりやすく解説

フリーランスと個人事業主の違いとは?働き方・手続き・税金をわかりやすく解説

Message box 公開日:2025.07.31 更新日:2025.07.30

独立して働く選択肢としてよく挙げられる「フリーランス」と「個人事業主」。似たような意味で使われることが多いこれらの言葉ですが、実際には制度面や働き方に違いがあります。開業手続きの有無や税金の扱い、社会保険の加入方法など、フリーランスとして活動するにも正しい知識が欠かせません。

 

フリーランスと個人事業主の違い

独立して働く人を指す言葉として「フリーランス」と「個人事業主」がよく使われますが、両者の意味や制度上の扱いには明確な違いがあります。混同されがちなこの2つの言葉を正しく理解することが、独立を検討する上での第一歩です。

 

◇ フリーランスとは

フリーランスとは、企業や組織に雇用されることなく、業務単位で仕事を請け負って働くスタイルを指します。職種は多岐にわたり、ライター、デザイナー、エンジニア、カメラマンなどが代表例です。

 

特定の勤務先に縛られず、複数のクライアントと契約を結びながら自分の裁量で働ける点が特徴です。フリーランスはあくまで働き方のスタイルを示す言葉であり、法律上の区分や身分ではありません。

 

◇ 個人事業主とは

一方で、個人事業主とは、税務署に「開業届」を提出して事業を営んでいる個人を指します。法人化していない事業者が対象で、小売業、飲食業、サービス業など幅広い業種にわたります。開業届を提出することで、青色申告や各種控除など税務上のメリットが得られるほか、事業者としての信用にもつながります。こちらは法的・制度的な区分として明確に定義されています。

 

◇ 両者の関係

多くのフリーランスは、継続的に業務を行い報酬を得ているため、税務上は「個人事業主」として開業届を提出しています。ただし、収入が少額であったり、副業的に単発の仕事を行っている場合は、「雑所得」として扱われ、必ずしも個人事業主に該当しないケースもあります。つまり、フリーランス=個人事業主とは限らない点に注意が必要です。

 

◇ 法的には「個人事業主」が正式な区分

フリーランスという言葉は便利な表現である一方で、法律上の定義はありません。税務署や社会保険、契約関係において正式な扱いとなるのは「個人事業主」です。そのため、制度上の申請や契約書類などでは、「フリーランス」ではなく「個人事業主」としての自覚が求められます。

 

このように、フリーランスと個人事業主は密接に関係しつつも、定義や扱いに違いがあるため、それぞれの特徴を理解した上で働き方を選ぶことが大切です。

 

手続き・税務・保険の違いと共通点

フリーランスや個人事業主として働く際に特に気になるのが、開業時の手続き、税金の取り扱い、そして社会保険制度です。両者は呼び名やイメージが異なるものの、実務面では多くの共通点があります。ここでは制度上の違いと共通点を分かりやすく整理します。

◇開業届と青色申告承認申請書:提出するのは「個人事業主」

個人事業主として正式に活動するには、税務署に「開業届出書」を提出する必要があります。これにより税務上の「事業所得」が認められ、青色申告を活用することも可能になります。青色申告を行うと、最大65万円の特別控除や家族への給与支払いの経費計上、赤字の繰越控除などのメリットが得られます。なお、青色申告を希望する場合は、開業届と併せて「青色申告承認申請書」も提出しなければなりません。

◇ 税金の扱い:フリーランスも確定申告が必要(事業所得/雑所得)

フリーランスとして仕事を受けて収入を得ている場合も、原則として確定申告が必要です。継続的に業務を行っているなら「事業所得」として扱われ、必要経費を差し引いた利益に対して所得税が課税されます。

ただし、副業的に単発の仕事を行っていたり、開業届を提出していない場合は「雑所得」とされることがあります。雑所得では経費計上に制限があるため、節税効果は小さくなります。

◇ 社会保険・年金:国民健康保険と国民年金が基本

会社に属さずに働く場合は、原則として「国民健康保険」と「国民年金」に加入することになります。これはフリーランスであっても個人事業主であっても共通です。なお、収入に応じて保険料や年金額が変動するため、所得申告は保険料算定にも関係してきます。また、収入が増えた場合には、国民年金基金や小規模企業共済などを活用して老後資金を準備する方法もあります。

◇ 制度上はフリーランスも個人事業主として扱われることが多い

フリーランスという言葉自体には法的根拠がないため、制度的な手続きでは「個人事業主」として扱われることが一般的です。たとえば、税務署への届け出や確定申告、保険加入などの手続きは、フリーランスであっても個人事業主と同じ手順を踏む必要があります。したがって、実務上は両者に大きな差はないという認識が重要です。

このように、フリーランスと個人事業主には呼び方の違いがあるものの、手続きや制度面では多くの共通点があります。正しく理解しておくことで、安定した活動と将来への備えが可能になります。

フリーランスと個人事業主、どちらを選ぶべきか

独立した働き方を目指す際に、フリーランスと個人事業主のどちらを選ぶべきか迷う方も多くいます。働き方の自由度や収入の安定性、将来的な事業の展望などに応じて、自分に合ったスタイルを見極めることが重要です。ここでは、それぞれに向いている人の特徴や判断基準を整理します。

 

◇ フリーランスが向いている人

フリーランスは、特定の雇用主に縛られず、自ら仕事を選びながら自由に働くスタイルです。時間や場所の制約を受けにくく、ライフスタイルを重視する人に適しています。

特に、リモートワークや副業として複数の案件を抱える人にはフリーランスという働き方がフィットしやすい傾向があります。一方で、収入が不安定になりやすく、社会保険や税金の自己管理が求められる点には注意が必要です。

 

◇ 個人事業主が向いている人

個人事業主は、税務署に開業届を提出し、事業者としての立場を明確にして活動する人です。屋号を使った名刺や請求書の発行が可能になるほか、青色申告による節税対策や各種制度の活用もできます。

 

特に、取引先との信頼関係を築くうえでは「個人事業主」としての正式な立場が重視されるケースが多く、将来的に事業を大きくしていきたいと考えている人に向いています。

 

◇ 法人化との違いも視野に:将来的な展望によって判断

さらに事業を拡大したい場合や、節税・社会的信用を重視する場合は、法人化(株式会社や合同会社の設立)を視野に入れる選択肢もあります。法人になると経費の幅が広がる一方で、登記費用や社会保険料の負担、事務作業の複雑化といったデメリットもあります。そのため、将来的な収入規模や取引の種類を想定したうえで判断することが求められます。

 

◇ 最終的な選び方

最終的には、自身の活動スタイルに応じて開業届を提出するかどうか、どの程度の収入や業務量を見込めるか、どのような契約形態で仕事を行うかといった点を踏まえて判断することが大切です。

 

制度上はフリーランスも個人事業主も近い立場にありますが、名乗り方や取引先への印象、申告上のメリットに違いが出るため、自分の働き方に合った形で選ぶことが成功への第一歩となります。

 

まとめ

「フリーランス」と「個人事業主」は独立して働く際によく使われる言葉ですが、意味や制度上の扱いには明確な違いがあります。フリーランスは特定の勤務先に縛られず、自由な働き方を指し、法律上の区分ではありません。

 

一方、個人事業主は税務署に開業届を提出して事業を営む個人を指し、法的に定義されています。多くのフリーランスは個人事業主として制度上扱われ、税務や社会保険はほぼ共通です。

 

フリーランスとして自由な働き方を追求するか、個人事業主として正式な事業体制を取るかは、自身の働き方や将来展望に合わせて選ぶことが重要です。また、規模拡大や節税を意識する場合は法人化も一案となります。それぞれの特徴と制度を理解し、最適なスタイルを選ぶことが独立成功への鍵です。